gottaNi ver 1.1

夏一夜


UP:2016-04-06

 透明なビニール袋の中で、窮屈そうに淡い緋色が揺れ動いていた。 「……金魚か?」 「金魚でなければ何に見えるのさ。メダカ?」 「あぁん? 馬鹿ぬかすなよ風流、こんなでけぇヒメダカがいてたまるか」  始まってしまった舌戦は […]


UP:2016-04-06

「珍しいな。乱れ菊に見えたが……彼岸花か」  浴衣の柄を見た的場屋の、第一声。  紫を主体とした濃淡の生地に、薄く重ねられた紅の曲線は、夕暮れの空に映える彼岸花の意匠。帯結びは片花文庫で、同じく彼岸花をあしらった簪を飾り […]


UP:2016-04-06

 風流(ふうりゅう)は、自室のベッドに力なく身体を投げ出して、億劫な気分を隠しもせずに口を開く。 「……で?」 「はい、的場屋(まとばや)からのご依頼で、宵祭りの間、香籠(かごめ)にお社の守りをお願いされたそうです。奇跡 […]


UP:2016-04-04

 ひりつく暑さの続く夏盛り。  連日の猛暑にも枯れるそぶりも見せず、思うざまに生い茂る木々の緑を背景に、佇む人影がひとつ。  蝉時雨さえ涼しげに感じさせるその姿に、的場屋(まとばや)は一時だけ歩みを止めた。  彼の気配を […]