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「そうだねえ…じゃあ良い子のみんなに、クリスマスにまつわるお話をひとつ」
「わー」
「むかしむかし、あるところに、それは悲惨なプロジェクトがありました…」
「!?」
「出だしから重い!!」
「残念ながら、この冬は休めないと思ってほしい。マネージャーは言いました。そのぶん、ゴールデンウイークは長く取れるようにする。しかし現場の士気はあがりません。なぜなら、みんな知っていたからです、このプロジェクトが落ち着くその頃、自分たち下請けはもう次の現場にいるだろうと」
「しんどい」
「つらい」
「ある夜、現場の惨状を見かねた上の人から『せめて元旦くらい、みんなゆっくり休みなさい』というお達しがきました。そうです、サンタクロースはこんなところにいたのです。少し遅い、とても温かいクリスマスプレゼントでした」
「……イヤな…」
「……予感がする…」
「悲劇は数日後に起こりました」
「やっぱり!」
「ぜってー何かあると思った!!」
「サーバーダウンはいやだ…サーバーダウンはいやだ…」
「svnサーバーが、突然お亡くなりになったのです」
「ぅああああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「……なんの話なんですか、これ」
「クリスマスIT社畜惨禍」
「クリスマス空いて…?賛歌??」
「クリスマスIT社畜惨禍。こう書いて、こう書いて、こう」
「……( ゚д゚)!?」
女は、長らく仕えるべき主君を見いだせずに生きてきた。生きるに当たって必ずしも、あるじが要るというわけではなかったが、家にも属さず、かといって、鬼の理、同胞の掟に背き離れるわけでもなく、独りでいる…というのは、鬼としては異端であったし、女自身、物足りない心持ちもある。
生まれた家は疾うに疎遠になっていたし、家に縛られる、というのはあまり性に合わなかった。さて、どこかに大きな家は構えず、ささやかな暮らしぶりの大君はおらぬものか、などと思案しつつ暮らすこと幾星霜。
うっかり、本当にうっかり、女が死にかけたのは、そんな長閑な放浪にもいくらか飽いてきた頃のことだった。その先で、彼女は唯一無二の主君と定める鬼に出会う。
月魄の最も美しい精髄だけで織り上げたような麗姿、およそ越える者などおるまいと思われる力。理の外にあってなお皇鬼の冠を戴く、離鬼に。
死にかけの障鬼を気紛れに拾い、承諾もなく血から力を押し込んで、結果的に女の命を救った、その離鬼に、彼女は迷いなく膝を折った。離鬼は理の外に在るもの、配下など持たぬと知ってなお、道具で構わぬと、その足許に額付いた。
それが香散見草と得鳥羽月の関係である。