gottaNi ver 1.1

 名前のない世界、遍在し点在する場所に、その《ライブラリ》は在る。あるいは、その《ライブラリ》が世界として、在る。
 洋館、宮殿、塔、洞窟、温室、テラス、庭園、地下室、トンネル、廊下、天空、水底――あらゆる場所につながり、あらゆる場所から繋がり、あらゆる場所とつながった『それ』は、時には整然と本棚の並んだ図書館であり、時には読みかけの本ひとつを残して忘れられた小部屋であり、時にはページの切れ端を敷き詰めた花道であった。
 散らかった物語の破片を収めて、今日も《ライブラリ》は、誰かとつながる。
>> lib_fragments
 ほそい背表紙がふと目に入る。これも縁と、忘れ去られたような小部屋に積まれていた本から、その一冊を取り出した。
 落丁、意味の通らない書き付け、欠けた記述。断章を拾い上げていくと、紙面を滑って何かが手の中へ落ちてくる。古びた栞。

 枯れ葉色をしたその遺産は、先達からの夢路の跡だろうか。
薄く朝日を透かした硝子の先から、遠く何かの鳥が鳴く。昼も夜もなく断章を追い、語られず散逸した世界の名残を追う日々にも、時折こうして朝はくるのだった。
まだ少しぼやける目であたりを見やれば、簡素な寝台はそのままに、見覚えのない華奢なテーブルがひとつ部屋に増えている。置かれているのは軽く焼き目の付いたパンとティーポット。
書痴の亡霊となってから、はて幾度目の食事であろう。いつしか忘れていたその習慣。……自分もまた、この王国の機構になりつつあるのだろう。
>> leaves
あなたの中から零れ落ちた言の葉
それはいつも
この心の表層を滑り落ちてゆく言の端

一向に耳へも頭へも記憶へも落ちない

それは
そのあまりの軽さ故にだろうか
それとも
そのあまりの空虚さ故だろうか
声など届かない。願いなど叶わない。
死ぬ事でだけ救われると信じるんだ。
たとえ愚かだと嗤われても。
死の瞬間にだけ笑おう。
>> dehyca_code
#術式言語 (仮)
発音が二通りある単語は基本的に「イ」の発音を《より強い》《明確な意志》の籠もる発音とする。
Lyは「りゅ」「り」、Deは「で」「でぃ」、esは「えす」「いす」のはず。
いずれにしても文字として綴られた際には区別されない。
Ly リ/リュ モノとしての『私』/意思としての『私』
De デ/ディ モノとしての『君』/意思としての『君』

es エス/イス 呼びかけ/命令

es De
[エス ディ]であれば「やぁ、君」程度、[イス デ]なら「おい、そこの」、[イス ディ]だと「ちょっとあんた」くらい、かなあ

es単体での使用は呼びかけ。したがって音は[エス]で、これは無視しても許されるレベルの「ねぇ」「ちょっといいかな」的な呼びかけとして使われる。

「es 固有名詞」は呼びかけの強さによって[エス]あるいは[イス]。
「呼び止める」意思が乗った場合は「止まれ」「こちらを見ろ」といった命令の意味合いが強まるので[イス]になる。

「es 動詞」であればほぼ命令なので発声は[イス]。
>> memolog
+病みたる皇鬼の矜持。
 鬼の基本として、戦闘能力至上主義があるわけです。対人能力とか知識とかでも価値はつくんだけど、それらは戦闘能力でつけられたポイントを補強する程度の効果しかない。
 まぁ、かといって喧嘩が強けりゃ性格が最低でもいいのかっていうと、やっぱ従属したくなる相手は礼儀とか弁えてる奴に限るらしいけど。

 んで、得鳥羽月がどうなのよっていうと、えっちゃんは破滅的に実力主義を無視する節がある為、絶望的に異端扱いされる。いや実際にあらゆる振る舞いが異端なんだけどさ。
 奴が普通の実力主義をモットーにしていたら、自分と同等以上ないし同等に限りなく近い相手以外に対しては、従属させるか、従属までしなくても格下として一段も二段も下からの態度をとらせるか、どっちかしてないとおかしいのな。
 ところが果の月は種族的にも実力的にも間違いなく格下なのに、ずかずかと邸に踏み込んでくるし得鳥羽月を対等の友人として扱う。そこんとこ見る限り、えっちゃんは基本事項ガン無視です。

 しかして、彼の皇鬼を知る連中は口をそろえて「死んでもあれの矜持には傷をつけるな」と真顔で言います。

 じゃあ奴の矜持って何、つーと。
 やっぱ実力主義なんだよなー。

 第一に、自他の能力差を正確に把握する。第二に、把握した力量差を正直に認める。んで第三に、それを忘れない。つまり従属こそ求めないけれど、能力は分かっとかないとアウトって感じ。
 だから舐めてかかって喧嘩売った輩や、実力を過小評価した輩や、何を仕掛けても怒られないと勘違いした輩は、ことごとく徹底的に潰されます。ご注意。
 従属を求めるか否か、それと評判を気にするかどうか、以外は、得鳥羽月の矜持って真っ当です、実は。

 でも、従属を求めたり主従関係の情を大事にしたりって、鬼として超重要な気質だから、そこが狂ってる得鳥羽月はそれだけで決定的におかしいんですけどね……。
+理不知の呼び方
えーっと、とりあえずスタンダードが「得鳥羽月」で本名がわり。
んで赤土系が通称にしてるのは「移ろい菊」か「菊のxx」で、これはご幼少のえっちゃんを「雛菊(幼き隠君子)」と呼んだところから派生。「雛菊がもう雛じゃねぇ」ってーんで「よく出歩くし、移ろい菊」に。
神格系だと「月魄」とか「月華の鬼」とか、月が基調の呼び方。
個人的に呼んでた名としては、露隠葉月の「病みたる皇鬼」と「可惜夜」に、果の月が「黄櫨染(皇の禁色)」で、一部の神格とか赤土の民とかが「理外」「理外の君」かなぁ。
塵祈・霞彩のいかんとも仲間は「理外の君」を使う場合が多く、素性バレ警戒時は「風招き(かざおき:風を起こす事)様」とかって呼んでます。
あとは格下連中が多く使う「忌鬼の君」と、それを更に限定化した「忌鬼の大君」とか。
「理不知」も呼び名の一つではあるけど、えっちゃんが自らの名乗りに使うほぼ唯一の名であるため、一種の諱扱いらしく、他人が口にすることは珍しいようです。
>> ss
少年はとある暑い国で生まれた。それ以上のことはもう誰も知らない。少し気合いを入れて遠出をすれば熱砂が吹きすさぶような土地で、めいめいから好き勝手に呼ばれてきた。
かつてどんな名前だったのかも、もう誰も知らない。あるいはそもそも、無かったのだろう。
少年も、べつに興味はなかったので、今はもう誰がどう『彼』を呼んでいたのかなど、すっかりと忘れてしまっている。
何番目とか、オモチャとか、そこのチビとか、そんなような、たわいもない呼びかただったような気はするけれども。

けっきょく、今も彼に名前はない。けれどもまあ、マイスターとか、絡繰屋とか、なんとなく彼が気に入ったもので呼んでもらえるものだから、いいんじゃないのと、思っている。


その鬼は、月がいっそう青白いある夜、ふと目覚めた。地の神、その原種として。土地に根ざした神気から生まれた鬼に血で繋がった親はなく、また当然に名もなく、ただ力だけが、夜のただ中にあってうそ笑んだ。
理を知らぬ、理外の鬼。親なく、家なく、ゆえに何にも守られず縛られず、幼くして同胞たちの掟から外れた、理不知(ことわりしらず)の離鬼は、時に暴虐とも言えるほどの無関心さでもって、己に関わってきた様々なものを、切り捨て、忘れ、滅ぼしていく。
いつしか理不知は諱となり、理不知の鬼はうすら寒さの伴う伝説となった。名を売ることにも無関心であったから、鬼は、それもまたどうでもよい事として、人心が噂するに任せた。

それが、得鳥羽月、と仮の名でまだ畏怖されるひとりの貴鬼の来歴である。

……という感じでブツ切りの雑多なメモやネタをもりもり放り込んだライブラリです、もりもり増えます。