朽ちた祭壇に、真新しい本。
絹張りか、艶やかに光を照り返す表紙が、斜陽の空間に君臨している。ただ、そこに記されていたはずの表題は、ない。
手にとって見れば、枯れた金色が点々と残されて、赤みを帯び始めた空の色に染まっていた。
箔押しされていた文字はどうやら、先に立ち去っていったらしい。
ひそりと、足取りに似た物音が耳をかすめて消えた。背表紙を辿るのに没頭していた思考が引き戻される。──気配が行き合いこそすれ、決して出会うことのない誰か。
ああ貴方もか、と知らぬ誰かに微笑んだ。
くる日もくる日も……狂うまで、我々はこの書痴の樹海をひとり彷徨い歩くのだろう。
絹張りか、艶やかに光を照り返す表紙が、斜陽の空間に君臨している。ただ、そこに記されていたはずの表題は、ない。
手にとって見れば、枯れた金色が点々と残されて、赤みを帯び始めた空の色に染まっていた。
箔押しされていた文字はどうやら、先に立ち去っていったらしい。
ひそりと、足取りに似た物音が耳をかすめて消えた。背表紙を辿るのに没頭していた思考が引き戻される。──気配が行き合いこそすれ、決して出会うことのない誰か。
ああ貴方もか、と知らぬ誰かに微笑んだ。
くる日もくる日も……狂うまで、我々はこの書痴の樹海をひとり彷徨い歩くのだろう。