gottaNi ver 1.1

 名前のない世界、遍在し点在する場所に、その《ライブラリ》は在る。あるいは、その《ライブラリ》が世界として、在る。
 洋館、宮殿、塔、洞窟、温室、テラス、庭園、地下室、トンネル、廊下、天空、水底――あらゆる場所につながり、あらゆる場所から繋がり、あらゆる場所とつながった『それ』は、時には整然と本棚の並んだ図書館であり、時には読みかけの本ひとつを残して忘れられた小部屋であり、時にはページの切れ端を敷き詰めた花道であった。
 散らかった物語の破片を収めて、今日も《ライブラリ》は、誰かとつながる。
>> lib_fragments
ふらふらと、芝生に線を引くように伸びる小径を歩く。
いつ、何の拍子に、何を見失うか、まったく予測不能なここで手にした書物は、夜を徹しようが、目が霞もうが、とにかく読み切らねばならなかった。眠い。睡魔を退けようと散策を続けると、横手に広がった木陰から覗く四阿の角が目についた。
 目覚め、覚えのない風景にしばし思考が空回る。見晴るかす草木は初夏の頃といった風。一夜を借り、眠りに落ちたはずの寝室の気配はとうに無い。
 ……ああまったく、寝ている間さえ『此処』の気まぐれは容赦なく、こう放り出して知らぬ顔だ。
 遠く、方向の当たりもつけられぬ遥かどこかで、鐘が隠々と響き渡った。
 今日も、書と知を求める放浪が、始まる。
>> leaves
世界に爪立て生命を嘆き、全てを呪うその前に。
譲れぬ想いを強く刻んで、
楽園などなくても構わないと
幼い頃に見た夢を 泣きながら紡いだその願いを
光に向かって投げ棄ててしまおう。
楽園など今はもう 望む必要はないのだと。
笑って。
此処に在る祈りだけが救いだと。
あなたの中から零れ落ちた言の葉
それはいつも
この心の表層を滑り落ちてゆく言の端

一向に耳へも頭へも記憶へも落ちない

それは
そのあまりの軽さ故にだろうか
それとも
そのあまりの空虚さ故だろうか
>> dehyca_code
Ly リ/リュ モノとしての『私』/意思としての『私』
De デ/ディ モノとしての『君』/意思としての『君』

es エス/イス 呼びかけ/命令

es De
[エス ディ]であれば「やぁ、君」程度、[イス デ]なら「おい、そこの」、[イス ディ]だと「ちょっとあんた」くらい、かなあ

es単体での使用は呼びかけ。したがって音は[エス]で、これは無視しても許されるレベルの「ねぇ」「ちょっといいかな」的な呼びかけとして使われる。

「es 固有名詞」は呼びかけの強さによって[エス]あるいは[イス]。
「呼び止める」意思が乗った場合は「止まれ」「こちらを見ろ」といった命令の意味合いが強まるので[イス]になる。

「es 動詞」であればほぼ命令なので発声は[イス]。
#術式言語 (仮)
発音が二通りある単語は基本的に「イ」の発音を《より強い》《明確な意志》の籠もる発音とする。
Lyは「りゅ」「り」、Deは「で」「でぃ」、esは「えす」「いす」のはず。
いずれにしても文字として綴られた際には区別されない。
>> memolog
書庫はひとつの記述から生まれたという。真偽は定かではない。
長く、幾つもの物語が綴られ、その幾つかは断片として書架へ収められ、別の幾つかはまた異なる断片として書庫の世界に溶けていったそうだ。
そうして、書庫は幻の王国となり、未知に饑(かつ)える旅人を捕らえる魔都となった。
氏族 clan
 ……幻想地球系においては、同じ『神』から始まった信仰を保つ集団を、クラン、氏族、一族、などと呼ぶことが多い。
 ある山岳部の『羽持ち』……星読の神に連なる羽の一族、北の氏族──雪の神に愛される雪花石膏たち、などがそれだ。
 また、氏族のはじまりが神とは別のルーツに拠る場合もある。
>> ss
青年は、道具だった。かつての理想と高潔さを忘れ果ててしまった、老いた権力者たちの、従順で優秀な傀儡だった。
同時に、青年はまた破壊者でもあった。賢老たちを、その都合の良い人形である自分を、そして自分をその地位へと押し上げた養父を、破滅させるために、彼は生きている。

協会すべての魔導士を束ね率いる総代、照黎司は、腹の中でそうして常に破滅を夢に見て生きていた。

腐敗を、もっと穏便な改革で何とかする方法もあるだろう。青年には、それを成し得るだけのものが備わっていたのだから。しかし彼は、そんな穏やかな末期など露ほどさえ望みはしない。
今日もただ、己のすべてを投げやりに投げ出すその時を待ちわびて、青年は微笑み生きている。
夜明けの藍色を見ると死にたくなる、少年はそういった人種だった。億劫そうに、欠伸と共に放り投げたその言葉は、べつに拾われなくとも構わないと、理解や共感を諦めて吐き出したものだ。
同情も憐憫も願い下げで、その場しのぎの慰めなどには反吐が出る。そうやって斜に構え、薄甘い馴れ合いを拒絶して、そうしてひとり、つまらない最後に行き着くのだろうと思って生きていた。

彼の横でぼんやり空を見ていた相手が、夕焼けを見ると消えたくなるという奴を知っている、と笑うまでは。

独りである、という点で同じ、空を見るたび死を思う誰かが、どこかにいる。
また面倒な人間もいるものだ、と、皮肉って笑い、しかし宮良慧という少年は、それで少しだけ報われた。

相変わらず夜明けにうんざりしながら、少年は今日も夕焼けを眺めて、少し笑う。
きっと今どこかで消えたくなっている誰か。そこに自分の話も届いて、きっと少し笑っているだろう。笑っているならいいだろうと。
どうしようもない世界で彼は、このごろ少しだけ、空に祈るようになっている。

……という感じでブツ切りの雑多なメモやネタをもりもり放り込んだライブラリです、もりもり増えます。