日も高い時分、荒れた小さな温室で、表紙の欠けた書と出会う。ここで読むには難があろうと、しばらく小径を歩いて見えてきた扉に手をかけると、そこには夕暮れの薄闇が垣間見える小窓と、まだ暖かさを宿したままの部屋に、軽食の準備が一式、整っていた。
……今夜は、落ち着いて本を読めそうだ。
崩れかけた書架の扉を押し開くと、潮騒に統べられた白と紺碧が眼前にあらわれた。途端にノブの感触は消え、扉はもう無い。
白い真砂は記述を待って忘れ去られた紙のようで、波が束の間、その白紙にしみを付けては消えてゆく。
海底には揺れる文字たちが見え──その遠さに吐息が零れた。
……今夜は、落ち着いて本を読めそうだ。
崩れかけた書架の扉を押し開くと、潮騒に統べられた白と紺碧が眼前にあらわれた。途端にノブの感触は消え、扉はもう無い。
白い真砂は記述を待って忘れ去られた紙のようで、波が束の間、その白紙にしみを付けては消えてゆく。
海底には揺れる文字たちが見え──その遠さに吐息が零れた。