夜の足音がささやかな気配で近づいてくる。わずかに冷えてきた風、落ちる影、かげる光。
その中にも王国の断章たちは素知らぬ顔で紛れ込んできた。のびる影はふと踊り、文字を綴る。書から漏れた記述はすぐに姿を消すので、捉えるのは一苦労だ。果てのない、追いつ追われつの彷徨は甘く、苦い。
ひそりと、足取りに似た物音が耳をかすめて消えた。背表紙を辿るのに没頭していた思考が引き戻される。──気配が行き合いこそすれ、決して出会うことのない誰か。
ああ貴方もか、と知らぬ誰かに微笑んだ。
くる日もくる日も……狂うまで、我々はこの書痴の樹海をひとり彷徨い歩くのだろう。
その中にも王国の断章たちは素知らぬ顔で紛れ込んできた。のびる影はふと踊り、文字を綴る。書から漏れた記述はすぐに姿を消すので、捉えるのは一苦労だ。果てのない、追いつ追われつの彷徨は甘く、苦い。
ひそりと、足取りに似た物音が耳をかすめて消えた。背表紙を辿るのに没頭していた思考が引き戻される。──気配が行き合いこそすれ、決して出会うことのない誰か。
ああ貴方もか、と知らぬ誰かに微笑んだ。
くる日もくる日も……狂うまで、我々はこの書痴の樹海をひとり彷徨い歩くのだろう。