密やかに、高く遠く鐘が響く。顔を上げて辺りを見回せば、ついぞ辿り着く順路を明らかに出来なかった、古めかしい鐘楼が目に入った。
椅子を立ち、一歩。
不意に、響く音は途切れ、またたいた視界には静かな温室と花の色が映る。振り返るが、いた筈の四阿はもう、読みかけの断章を置いたまま消えていた。
崩れかけた書架の扉を押し開くと、潮騒に統べられた白と紺碧が眼前にあらわれた。途端にノブの感触は消え、扉はもう無い。
白い真砂は記述を待って忘れ去られた紙のようで、波が束の間、その白紙にしみを付けては消えてゆく。
海底には揺れる文字たちが見え──その遠さに吐息が零れた。
椅子を立ち、一歩。
不意に、響く音は途切れ、またたいた視界には静かな温室と花の色が映る。振り返るが、いた筈の四阿はもう、読みかけの断章を置いたまま消えていた。
崩れかけた書架の扉を押し開くと、潮騒に統べられた白と紺碧が眼前にあらわれた。途端にノブの感触は消え、扉はもう無い。
白い真砂は記述を待って忘れ去られた紙のようで、波が束の間、その白紙にしみを付けては消えてゆく。
海底には揺れる文字たちが見え──その遠さに吐息が零れた。