朽ちた祭壇に、真新しい本。
絹張りか、艶やかに光を照り返す表紙が、斜陽の空間に君臨している。ただ、そこに記されていたはずの表題は、ない。
手にとって見れば、枯れた金色が点々と残されて、赤みを帯び始めた空の色に染まっていた。
箔押しされていた文字はどうやら、先に立ち去っていったらしい。
往きて語られるものあれど、還りて語るものない、無名の都。此処には、今日も見果てぬ書たちが並ぶ。
無限の叡智をおさめた殿堂、と称される一方、知識の万魔殿、無知喰らいの巣、とも呼ばれる魔の領域。
──迷宮書架、すなわち《ライブラリ》が、その名であると知るのは、我々だけだ。
絹張りか、艶やかに光を照り返す表紙が、斜陽の空間に君臨している。ただ、そこに記されていたはずの表題は、ない。
手にとって見れば、枯れた金色が点々と残されて、赤みを帯び始めた空の色に染まっていた。
箔押しされていた文字はどうやら、先に立ち去っていったらしい。
往きて語られるものあれど、還りて語るものない、無名の都。此処には、今日も見果てぬ書たちが並ぶ。
無限の叡智をおさめた殿堂、と称される一方、知識の万魔殿、無知喰らいの巣、とも呼ばれる魔の領域。
──迷宮書架、すなわち《ライブラリ》が、その名であると知るのは、我々だけだ。