往きて語られるものあれど、還りて語るものない、無名の都。此処には、今日も見果てぬ書たちが並ぶ。
無限の叡智をおさめた殿堂、と称される一方、知識の万魔殿、無知喰らいの巣、とも呼ばれる魔の領域。
──迷宮書架、すなわち《ライブラリ》が、その名であると知るのは、我々だけだ。
揺れる水面の奥に書架が深く続いている。分かっていてもつい伸ばした指は、やはりぬるい水に濡れただけだった。
決して届かない本たちを映したそれが、せせら笑うように波立った。
悔し紛れに思い切り手を差し入れ、掻き回して波紋を広げると、何かが触れる。
おっかなびっくり掴んで引き上げた手のひらに、濡れてにじんだページが張り付いてきた。
……読めない。余計に悔しい思いをしただけの出来事だった。
無限の叡智をおさめた殿堂、と称される一方、知識の万魔殿、無知喰らいの巣、とも呼ばれる魔の領域。
──迷宮書架、すなわち《ライブラリ》が、その名であると知るのは、我々だけだ。
揺れる水面の奥に書架が深く続いている。分かっていてもつい伸ばした指は、やはりぬるい水に濡れただけだった。
決して届かない本たちを映したそれが、せせら笑うように波立った。
悔し紛れに思い切り手を差し入れ、掻き回して波紋を広げると、何かが触れる。
おっかなびっくり掴んで引き上げた手のひらに、濡れてにじんだページが張り付いてきた。
……読めない。余計に悔しい思いをしただけの出来事だった。