そんな情のかたちもある
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……気に入らない。
それが初めて会ったときの正直な心だった。
涼しげな目で、小奇麗な笑みで、どこか一線を引いた場所からこちらを他愛ないものと見ている。
そんな捻くれた印象でもって、自分は彼に苛立ちを向けていた。
思いがけず長い付き合いになった今なら、当時の自分がどうしようもないガキで、それはまあ微笑ましくも思うだろう、と理解もするが、いちど身についた反発心を拭い去れるほどではなく。
だから、まあ、並ぶようになった今も、あの頃と変わらず微笑むその相手は、苦々しい存在では、あったのだ。
「的場屋の」
ふ、と協会の事務処理に付き合っていた折、こぼされた呼びかけ。
「なんだ?」
「私はそろそろ行く」
「…………」
「ここの所、些か面倒が重なったろう。香籠……奇跡屋としてはこのあたりが潮時だろうさ」
「手前ェなあ……そういう大事は少しぐらい勿体つけられねぇのか」
「おや」
習い性になった渋面でひねた返答をすれば、少し可笑しそうに片眉を動かして、一言。
「別れを惜しむ程度の間は必要だったかね」
「どこへなりとさっさと行け」
「っふ、そうさな」
反射で毒づけば、見越していた風情で効いた様子もなく笑われた。
――ああ、これだから、俺はこいつが、いけ好かないのだ。
何でもないことのように別離を告げて。
そうして他の連中には、告げることさえせずに行くのだろう。
こうして後処理を投げてくる程度には、こちらを認めたくせに、別れひとつ感傷に浸らせることもせず、捨て置いて。
結局、あの時から睨んできた背はそのまま手の届かないところへ去っていく。
自分も自分で、それを不義理だなんのと責めるほど素直ではないから、返せる言葉などたかが知れていた。
「追うなら止めるつもりはねぇぞ」
「構わない、そこまで手間をかけさせるつもりではないよ」
「そうかい」
きっとこの男の行方を探すだろう、何人かの同業者を念頭に釘を刺せば、また笑われる。
ああ、本当にお前は、すべてどうでもいいという風で。
だから、この心は、置いていこう。
「もともと奇跡屋なんざ勝手しかできない連中の集まりだ、行くなら好きにすりゃあいいし、追う奴もそのままでいいってんなら構わねえさ。店仕舞いだけはしていけよ」
「ああ」
それだけ、あとを任されたものとして、応えて。
あの日の苦々しい憧憬を、ひとつなかったことにする。