gottaNi ver 1.1


 千変万化

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 少女は過疎の迫る地方に生まれた。緩やかに衰退してゆく、伝統と因習がまだ残る集落で、色のちぐはぐな双眸を抱えて生きていた。噂する人々の感情は、神秘への好奇よりは、奇異の目のほうが多かったように思うが、今はもうよく覚えてはいない。
 記憶しているのは、彼岸まで続くように咲き誇った、あかい花の色と、彼岸から押し寄せてくるような、あかい空の色。
 身を隠すように、近くなる夕闇を待ちながら、少女はそっと地に伏せ、目を伏せた。

 訪れた薄い眠りからふと目覚め、花弁の中で瞬いた瞳に映ったのは、まるで花の化身のような美しいひと。
 かみさまだ、と少女は夢心地にそう強く信じ──憐れむように差し出された手を、取った。

 実際には、神という括りからは少しだけ外れていた、少女のかみさま、真鳥のひめさまは、それはそれとして、地の神に近い存在として畏敬されるものではあった。
 娘として遇され、愛された少女は、その双眸さえも佳(よ)きものと笑まれ、慈しまれた。
 そうしていつしか、彼女たちは同じものへと変じてゆく。……人にして、人ならざるものへ。人ならざるものにして、人へと。
 いびつな、ものへと。

 満開の花の中ですくわれた少女、曼珠沙華の姫。
 千変万化、万化と呼ばれる奇跡屋──万華は、そうして一度、もろともに道を踏み外しかけた。

 改めて親子の縁を結び直した今は、人として、人ならざる『母』と、笑い合っている。


UP:2023-01-13
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