gottaNi ver 1.1


 宮良慧

***

 夜明けの藍色を見ると死にたくなる、少年はそういった人種だった。億劫そうに、欠伸と共に放り投げたその言葉は、べつに拾われなくとも構わないと、理解や共感を諦めて吐き出したものだ。
 同情も憐憫も願い下げで、その場しのぎの慰めなどには反吐が出る。そうやって斜に構え、薄甘い馴れ合いを拒絶して、そうしてひとり、つまらない最後に行き着くのだろうと思って生きていた。

 彼の横でぼんやり空を見ていた相手が、夕焼けを見ると消えたくなるという奴を知っている、と笑うまでは。

 独りである、という点で同じ、空を見るたび死を思う誰かが、どこかにいる。
 また面倒な人間もいるものだ、と、皮肉って笑い、しかし宮良慧という少年は、それで少しだけ報われた。

 相変わらず夜明けにうんざりしながら、少年は今日も夕焼けを眺めて、少し笑う。
 きっと今どこかで消えたくなっている誰か。そこに自分の話も届いて、きっと少し笑っているだろう。笑っているならいいだろうと。

 どうしようもない世界で彼は、このごろ少しだけ、空に祈るようになっている。


UP:2023-01-13
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