gottaNi ver 1.1


<お題>
シリウスの祝福をうけた旅人。血星石の羽を持つ。絡まった絆をほどくため、意地っ張りな竜の恋心を求めて旅をする。紅水晶に縁の深い旅人とは師弟関係。

***
 暮れかけた淡い藍色の空を渡って、沈みつつある夕日の赤色を写した羽が、風を纏っていた。

「やあ、助かった。一晩いいかな?」
 深い緑の地色に赤を散らした翅(はね)は、揚羽蝶を思わせる形状。長さのある、ほっそりとした見た目に反して、その四つ羽は吹き抜ける風を造作なく捉え、軽やかに羽ばたく。
「大晶洞で足止めを食らってね、宿をどうしようかと思ってたんだ。……いや、ちょっと紅水晶には縁があるから、挨拶に顔出ししただけ。まあ、旅の息抜きかな」

 星雲にも似た、血星石の羽を持った旅人は、そうして今夜の語り部となった。

 宿した祝福はシリウス、宵の空に瞬き始めた一番星。
「捜し物というか……尋ね人というか、ね」
 蒼く輝いた天の星を示してから、つと表現を思慮するように、赤い星の煌めくその羽を揺らし、旅人は言葉を紡ぎ始める。
「求めているのは、とある竜が抱いた恋。これがまた意地っ張りで……まったく、手間をかけさせてくれるよ」
 下手に意地を張ったばかりに、いくつも重ねた思慕がもつれ、縒り合わさった糸のような、頑なな塊になってしまったのだという。絡まってしまった絆を解くためには、どうしても、その竜の恋心が要るらしい。
「――さっさと屈してしまえば良かったのに」
 誰も彼もが、話をややこしくしてくれる――そう嘆いた旅人は、ひとつかぶりをふって肩を竦めた。

「仕方ないから、追うけどね。天の星と地の星と、風を渡る羽に、猟犬の星まで宿して、これで獲物に逃げられたら、こっちが天狼の牙に灼かれてしまうし」
 地の星、背に負った血星石をひと撫でして、天に座す祝福の星をそのまま映したような、清冽な威圧を覗かせた目が笑う。

 絡んでしまった絆には多分、この旅人の想いも引っかかっているのだろう。
 数限りない星の下、幾つもの思いが、幾つもの旅路を辿ってゆく。

***
『羽』をどうしようかなあ、と悩んでググってみたりもしたけれど、結局はアゲハ系に帰ってきたうえ、そんな情報は詳しくなくていいんだよ!と我に返ったのです。
オナガアゲハとモンキアゲハを足して割ったようなイメージでした。


UP:2016-05-11
よければ感想ください!|д゚)ノシ