<お題>
ミラの祝福をうけた旅人。緑柱石の瞳を持つ。神様に捧げるため、王様が隠してしまった宝物を求めて旅をする。プロキオンに縁の深い旅人には逆らえない。
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「祝福はミラから」
深く透き通ったエメラルドが、天に輝く変光星へと眼差しを向けた。
「緑柱石の神も一柱というわけではございません。我らが神はそのうち、遊牧民の守護者、と伝えられているのですよ。ですから、この瞳は、緑深い山々や森のものというより、風と天地を見通し、青々と広がる草原や丘陵から授かったもの、と考えられております」
探し物は、その神へ捧げるための宝物だという。
「大祭に臨んでは、こうして探求者を送り出す慣わしなのです」
聞けば、それが遊牧を始まりとする緑柱石たちの伝統であるらしい。供物、宝物、書物、あるいは旅自体の記録……そういった『探し物』を、神事の一環として執り行うそうだ。
「此度、探して参ります宝物は、かつて、さる王が所有し、いずこかへと隠してしまったものだそうで。痕跡を辿り、我が身は旅の途上にある、という次第です」
つと、その鮮やかな緑を眇めて、旅人は夜空を視界に映した。
緑柱石の神のための、隠された秘密を探し求める、緑柱石の瞳。その目ゆえに、旅人はこの旅に選ばれたのかもしれない。
「旅そのものは、むしろ快いものです。日々、新たな体験が糧となり、身になってゆく。時折、他の旅人と行き合うのもまた、得難い経験で……ここには、きっと多くの旅人が訪れたのでしょうね」
その身に宿す祝福の星を仰いだまま、紡がれてきた旅路に思いを馳せてか、ほのかな笑みを浮かべる。
「……プロキオンの?」
幾夜か前に行き合った旅人の話をすると、瞳が刹那、色を深めて鋭く瞬いた。
「……いえ、こちらの話でございます。プロキオンには少々、はばかるところがございますして。……ですが、星々の祝福も、数多あるもの。お話の旅人が我が身に関わる御身であるとも、限りませんからね」
数多の旅人たちがここで数多の夜を越してゆく。
地には道が、天には星が、夜には夜が、変わらず続くこの世界で、旅人たちの旅路もまた、続いてゆくだろう。
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そろそろ星も石もダブり始めてきたよ!しんどい!