距離は重要ですからね!
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「こうしてご挨拶をするのであれば、初めまして、のほうが良いのでしょうね。……鬼見城帝が愚兄、ツイリです」
どこか自嘲するような言葉と、慈しむ色の強い瞳で、その美しい人は穏やかに微笑んだ。
「勝手ながら、殿下の成長したお姿を目に出来たこと、鬼見城帝陛下の『兄』として、嬉しく思っていますよ」
「なんですかあれ、なんなんですかあの方」
「ひとの兄になんだお前な……まぁあれがあれなのは今更だが……」
「どれがあれなんです?」
話題の人物が関わるとき、度々この父が見せる遠い目。この含みのある態度がずっと気になっていた俺は、満を持して面会許可を取り付けた……という訳で。
「どれと言われてもあれはな……あれだからとしか、言えることがないんだが」
「実際お会いしても父上のその顔の理由、よく分からないままだったんですけど。めちゃくちゃ穏やかで優しそうで、言っちゃなんですけど父上を悩ませる厄介案件にしてはこう……迷惑になることはしそうにない美人さんでしたよ」
「御しやすい?」
「う、んや、そこまで露骨に言えるほどにはまだ判断材料がないですけども」
さすがに頷くのは躊躇われ、言葉を濁す。と、うっすら、嘲るような皮肉るような、底意地の悪い雰囲気を見せていた父の目がなんとなく和らいだ。
あ、これ踏み込んだらやばかったやつだ。
生まれたときからの、短くはない関係だから、分かる。ここで乗ってたら多分、自分はこのひとの中で派手に評価を下げていたんだろう。
「俺から言えることは、とりあえずふたつ」
「はい」
「ひとつは個人的な希望だ、必要がないなら極力あれとは関わりを持たないほうがいい」
「……はあ」
「もうひとつは、純粋な忠告だ。よく聞けよ」
「……はい」
「――天泣は、ただの無能を四十年も王座につけておくような国では、ない」
「…………了解です」
つまりまあ、まだ自分は、なにも知らないという話らしい。