この覚悟だけは抱えていく
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それは、私が己に課した義務だった。
なによりだれより優しく遠いそのひとのため、ひとつ、絶対に成し遂げなければならないと決めたこと。
兄は、優しいひとだった。すべてを身ひとつに引き受けて、それでも柔らかく微笑んで、そうしてすべてを手放していた。
自身のしあわせも、安全も、王として立つことを選んだその時に、捨ててしまっていたのだろう。
国の礎になり、すべての民を守り、等しく掬い上げるために、個であることも、放棄した。
ただ、この国の存続のために動く、機構。天泣の信仰と、国益とを、合理でもって司る……そんなひどく冷徹な存在として、あのひとはいつでも笑っていた。
道は、敷かれていた。
私はただ、上を歩いていくだけでよかった。
――微笑み続ける愛しい兄を、指先ひとつすら伸ばし引き留めることも出来ずに。
知っています、残酷なひと。
私たちがただ己の無力を嘆くだけでいいように、出来ることなどなにもなかったと泣けるように、なにかができたならばと悔いずにいられるように、貴方はすべてを周到に埋めてゆかれましたね。
分かっています、優しいひと。
王であることを選んだ貴方はすべてを犠牲にするのでしょう。私たち弟妹すら等しく、例外なく。
そうしてきっと、永遠に、その責を背負い続けてゆくのでしょう?
だから私は、決めていた。
お兄様の傷にだけは、なるまいと。
――私は、幸福にならなければ、いけない。
決して、断じて、あのひとの背負う重荷のひとつに並ぶことなど、あってはならない。
……証明を、するのだ。
その選択が、間違いなく私を幸福にしたのだと。
ねえ、お兄様?
――私、しあわせになりました。幸せでした。
だからどうか、私のことくらいは晴れやかな思い出にしてくださいね?
可愛い妹からの、お願いです。