いつになろうと、きみを待つ
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きみを失ってしまえるようなわたしなど、いらない。
そんな世界ならば、滅んでしまえばいい。
永遠の楽園であった〈庭〉とその主たちとを欠いた世界は、その対価としてひとつの『火』を得た。
――魔導。
生来の素質にのみよって使えていた、世界に働きかける特殊な技能。その一部は、楽園の主たちの欠落をもって、後天魔導として世界に遍く散り、万人に扱える火となった。
その裏で、世界は、ひずみ始めていた。
「……迅深」
「ごめんね、沙迅」
昔を、思い出す。きみはよく、そんな泣きそうな顔をして、それでもわたしを気遣って微笑んだね。
「確かに、境界の揺らいでいる今、借授魔法は神界からあり得ない加護を引き出してしまっている。……それでも、無謀だよ」
「でも、わたしなら出来る」
そうだろう。
当代ほぼ最高の素質と技能をもったこの魔導師ならば、パスを辿って『神』に直接その願いを届けることも、あるいはできるのだろう。
けれどそれは、ひどく勝算の薄い賭けだ。
異界の神、加護のみを境界から受け渡すだけだった存在、それが我々を塵芥として捨ておかない保証などないのだから。
「でもね、沙迅」
笑って――晴れやかに、真っ直ぐに、笑って。
「わたしは、あなたが誇ることのできないわたしなら、いらない」
「……知ってる」
「あなたの生きる世界を、あなたの大切なものたちが暮らす今を、守れる可能性があるなら。わたしは、やるよ」
世界なんて、どうでもいい。そう言ってきみの手を引き留められたなら、わたしは楽になれただろうか。
けれど、きみの願いを踏みにじれるほど独りよがりにも、なれなくて。
「……また、会えるよ」
「……うまくいけば、の話だよ、それは」
「うまくいくよ。――だってわたしは、あなたの誇るものなんだから」
ねえ、神様。
もしそんなものがいるのなら――調律を失ったこの世界に、まだ慈悲の余地があるのなら。
どうか、わたしからきみを、奪わないでくれ。