あたまからしっぽまで全部イフ!!(
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幼い、弱々しい瞳が揺れる。ぎこちなく、翳りを隠せないままで浮かべる小さな笑みは、あまりにも拙(つたな)かった。
「大丈夫、です」
それでも、応えたその言葉は、いつもの『兄』によく、似ている。
天泣王室に入る以前――俺の知らない、おそらくもはや誰も知りはしないだろう、ツイリという『こども』が、そこには、いた。
「……大丈夫、ではなさそうですねぇ」
「大丈夫では、ないな」
どこか自分を警戒し、怯えてさえいるような雰囲気に、一度コゾメへ対応を預けて執務室で頭を抱えれば、ひょっこりと現れた息子がそんな風に声をかけてきた。
いつもの軽薄な茶化す空気が薄いのは、多分、それだけこちらがひどい様子ということだろう。
「記憶と身体の退行、ですか」
「らしい。記憶だけならまだ精神への干渉術式は可能だそうだが、連動して身体変化まで起きることは本来、あり得ないと言っていいとの話だが……」
「でも、なっていらっしゃるんですよね?」
「なって、いる」
整った顔立ちは幼くなってもさして変わらず、まず少女と間違うだろうもの。あの『兄』を先に知っていなければ、ただ儚く無力で、容易く折れて食い物にされるであろう、としか見えない、そんなこどもだった。
……気弱に揺れた瞳が、ちらちらと心をざわつかせる。
自分の知るツイリという人間は――欺くためにそうあることこそあれ、本心から揺らいだことなど、なかったのだと、思う。あれは、そういう生き物だ。
それが今は、あんなにも脆い。
何かを探すように惑う視線、伸ばす先を見つけられずに握り込んだ指先。それを見逃せるほど鈍くはないから、あのこどもが何かに、誰かに、頼ろうとしていたのだと、察せてしまう。
縋ろうとした『なにか』はおそらく、もう誰も知らず、どこにもいないものだろう、とも。
何がどうすれば、あれが、あれになるというのか。
怯えて、縋ろうとし、心情を覆うことさえ満足にできずに、それでも笑おうとする姿は、どうしても、すべてを突き放しすべてを背負って微笑み続ける、あの苛烈な在り方とは重ならない。
あれがツイリであるはずがない、という思い。
あんな様子のこどもが、守られることもなく潰されていいはずがないという心。
ああ、俺も大概に混乱している。
――それでも。
お前があのツイリだというのなら。
俺は結局、この手を伸ばすのだろう。どうあれ『どうか』と、祈りながら。