妹ちゃんたちと、てんこぞと
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ふっくらとした小さな手が、おそるおそる伸ばした指の先を柔らかく握ってきた時の、あの何とも言いがたい、愛しさと不安とが混ざったようなむずがゆい温度を、懐かしく思い出す。
自分を引き取り、王族として育ててくれた養父には、長らく子がいなかったそうだ。それが、検討を重ねて養子を迎えようとした途端、王としては珍しいほどの短期で兄弟に恵まれた。
そこからほぼ十年……これもまた、王としてはさほど長い期間ではなかったが、次に生まれたのが、双子の姉妹。それまで末子だった自分にとって、初めてできた年下のきょうだいということになる。
いや、あるいは以前の自分には、いたのかもしれないが。……覚えていないのなら、いなかったものと変わりはないだろう。
ともかく、そのふたりは自分が記憶している範囲での、初めての妹で。これでお前もお兄ちゃんだね、などと笑う兄に、そんなものか、と思ったりもしたのだった。
そんな、あまりにも小さく、少し力を加えれば潰れてしまいそうだったふたり。
それが、いまは楽しそうに、まだ小さいながらもだいぶしっかりしてきた手で、なにやら何とも言いがたい物体を捏ね回している。
「へびさん」
「にさまー!」
「……いや、あー……うん、いい手つきだな」
蛇はともかく、にいさま?は判別がつかないが。まあ、楽しそうに生地をのばしている様子に、水を差すこともないだろう。
とはいえ、任せきりでは何がどうなるか分からない。余ったぶんやら千切れたぶんやらは、こちらで引き受けておく。
「殿下はさすが、お見事ですな」
「……無理に褒めなくていい」
「いんや、飲み込みがいいほうですよテンロウ王子は。あんまり自覚してません?」
「そうか……?」
料理長と世話役とにそんな言葉をかけられつつ、とりあえず丸やら四角やら、それらしい形にまとめ直して後を託す。
「では、焼いてしまいましょう。……楽しみですなあ」
「おいしくしてね?」
「たのしみね!」
「まあ、なんだ。……お前たちの手作りなら、兄上たちも喜ぶだろう」
「……そんな話があって、まあ、何度かクッキーくらいなら作っていたんだが」
「はあ、なるほど。それで作る手間などご存じでいらしたと」
「こどもの作る簡単な菓子であれなら、まあ普段の料理にかかる手間もいくらかは思いが及ぶだろう」
応じながら、どうも様子がいつもより……棘と言うほどではないが、小さな引っかかりがあるな、と考えて、問う。
「あー、なんだ、コゾメ。……食べてみるか?」
「っ!」
なんとなく――妹たちが拗ねた時のことを、思い出す。だだをこねて泣き叫ぶようなことはほとんど無かったが、ずるい、と少しむくれた様子をして不満をあらわすことは時たま、あった。
そんな風に、この相手のわずかな揺れを、分かるようになってしまった。
そうして、その不満をなんとかしてやりたいとも、思う。
なんとなく――なんだかんだ、もう、これはそういうことなんだろう。