叔父上のやったれ回。
生ききるしかないならば、戦え。
***
「まあ、お前の選べる道としては最適だろう」
それだけを返して、彼は承認の署名と印をあっさり書類に記した。
――天泣には、王の指揮系統から外れた組織がひとつだけ、存在する。
特務班。
天泣の擁する最大戦力にして最精鋭、他の部隊との連携なしに独立して任務を遂行できる、規格外の集まり。多くの諸外国が特務班との衝突を避けることから、最強の抑止力と見なされ忌避される一団だ。
だが、その本質は本来、異なる。
王に属さない、所有されるものではない、というその意味は――いつでも王に反旗を翻せるということに他ならないのだから。
天泣の王が、天泣が天泣として存在するための象徴なら、特務班はそれが正しく機能しているかの監視機構である。特務が王を承認するかが、王としての正当性を保証するのだ。
……天泣の在り方を堅持できる王ではない、とかれらがそれを結論とすれば、王など容易く切り捨てられる。
――で、ありながら、当代の王は、特務としての籍を維持したまま、即位を果たした。
反応は好意的、というよりも面白がる風情の強いもので、ここに至るまでどれほどの生き様を見せつけてきたかが窺える。
「いいじゃないですか、面白い。特務の『刃』にして天泣の『剣』だなんて」
「……まあ、いいんでないの。アレは自分が王にあらずと判断するくらいはきちんとできるだろうし、その時に自分の首へ『刃』を向けられないような腑抜けでもないでしょ」
「いやー、あのおチビがねえ……ま、面白いしいいんでないの」
王として何か不手際があれば、特務として自ら首を落とすだろう、そういったある種の信用が、特務たちのなかにはできていた。
――どうせ誰かが天泣の在り方を背負うなら。
――どうせ王が折れたときに、誰かが首を飛ばさなければならないなら。
背負うのはどちらも自分で、いい。
そうして笑い、特務――天泣の刃として、戦歴を積み重ねてきた【絶禍】は、身内に余計な在り方を強いるまいとして、天泣の正統な『剣』――王となった。
個としての幸いも未来もすべて捨てて、そうしてようやく、すべてを守れる。そんな、いびつな在り方を、それでもツイリやレンヨウ、特務たちは、よしとした。
「――進むがいい。この先が、命の限り続くお前の戦場だ」
告げて、そうして、ツイリの師にしてこの在り方を決定づけた元凶は、笑った。
「ご即位、おめでとうございます、陛下。――我らが主」
生きる限り続く、その戦いを言祝ぐように。