gottaNi ver 1.1


いつまでも続くはずだった、春の日々。

***

 梢のあいだを、花の気配を乗せて風が渡る。〈庭〉のこの辺りは、ゆるやかに春を迎えつつあった。
 どこかで、同胞が弾む声をあげている。
 姿は見当たらなかったが、それほど遠くではないだろう。

「イグ」
 普段の呼びかけであるそれを少し強く口にすれば、ほどなく、先ほどの自然なそれより強く、風が吹き抜けた。
「コード!」
 応えは上から。
 支配領域である風を使い、空を駆けてきたのだろうイグが、飛びつく勢いで降下してくる。
「見て見てー!」
 手には、淡く色づいた木の枝が、ひとつ。
「どうした?」
「拾った! あ、ほんとにたまたまだからね!」
「……分かっている」
 こちらを気遣ったのであろう慌てた説明が、なんともこそばゆい。
 私たちの中でも感情表現が豊かで、勢い任せな所の目立つイグではあるが、無理に花を手折ってくるような性根はしていないと、知っている。

 特に自分は、地を支配領域としているから。
 おそらく、気を揉んでしまうことがないよう、咄嗟に言葉を足してくれたのだろう。

「綺麗だなと思って、見せたかったから持ってきちゃった」
「この辺りは春に近いのだろう。もう少しすれば、きっとその花も満開になる」
「じゃあ春を少し先取りしちゃったねえ、ふふ。また咲ききった頃にみんなで来よう?」
「そうだな。アルもきっと喜ぶだろう」
 いまひとりの名を出せば、楽しみだねと、また弾む声が返された。

 ――ここは永遠の庭、すべてを内包した常春の楽園。
 〈私たち〉は、終わることなど知らずに、ただ笑えていた。


UP:2026-04-04
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