ひょっとしておもしれー男か?という最初のやつ!
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「後ろに」
短く、それだけを告げて、自身は迷いのない様子で一歩、前へ。それが私を庇うためだということを察せないほど、愚鈍ではないと自負はある。
あら。
意外であった動きに、心のうちでだけ呟いた。
じきに鬼見城の君主となることが内々に決まっている身で、矢面に立つとは。
「……護衛がおりましょう、下がられては?」
「万が一があっては困る」
……話が本決まりとなる前に、不手際を指摘されるような瑕疵をつけたくはない、そういう話だろうか。であればと納得しかけた耳に、続けられた言葉はうまく入ってこなかった。
「伴侶を守れもしない腑抜けではお互い差し障るだろう」
「……は」
「……何か?」
「いえ」
反射的に応じてから、まじまじと――思えば初めて――相手を、きちんと見る。
伴侶。間違いではない。
鬼見城の長子である自分との婚姻により、この男は玉座を得るのだから、まあ、そういうこと、ではあるのだ。
けれど。
この件はどこまでも、情など入る余地のない、政情ありきのもの。それは互いに承知の上とは、既に言葉を交わして確認しているはず。
不躾な私の視線に、不機嫌そうに眉根を寄せ、その人は、言葉を重ねた。……今ならそれが、私の態度への不快感ではなく、己の言葉足らずを疑ったゆえの渋面だと、分かる。
「……どうあれ一生の付き合いになるのだから、せめて誠意くらいは示すだろう、それは」
「失礼ながら馬鹿真面目でいらっしゃる?」
「言い方ァ!」
思わず、といった風に返された短いそれが、なにやら妙に可笑しくなってしまって。
存外、面白いかもしれないと、思ったのだ。
それが、はじまり。