いきいきセピアさんだよ!
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あ、まずいかも。……と思ったときには、たいてい物事は手遅れだ。
今もそう。
「……あっちゃぁ……」
どこまでいけるかと登った庭木の枝が、幹との境目からミシリと嫌な音を発している。
下には、このごろ感情が豊かになってきて可愛さ増し増しの弟が、ひとり。
「あに……セピア!」
「テンロウはそこにいてねー、うっかり落ちてぶつかったら僕たぶんえらいことになるからさ!」
なるべく不安にさせないように、それでも万が一にも怪我はさせたくなくて、選ぼうとした言葉は結局なんとも間抜けな感じなってしまった。
ああ、うん、ぜんっぜん安心できないだろうね、ごめんて。
下手に動けば弱った枝にとどめを刺してしまいそうで、でもこのまま乗っていたところでたぶん落ちる。
やらかしたなあ、どのみち落ちるならうまく落ちたい。
お手上げの気分で、せめて幹に近い辺りに移動したほうがいいかな、とか、そんなことをぼんやり思案しながら、天を仰ごうとした視線が、ぱちりと合った。
「……あ」
窓越しに、ちょっとびっくりするくらい綺麗な顔をした兄が、ひとり。
たぶん表情で何か起きた、と察したんだろうか、そのまま窓を開けてこちらに軽く身を乗り出したツイリ兄さんは、少しだけこっちを注視してから――いちど引っ込んだと思ったら窓から降りてきた。
「うっ、そ、ちょ……」
そこ、二階。
正直なにをどうしたらそうなるのか、よく分からない。たぶん、身体強化して壁の突起だとかをうまいこと使うとああなるんだと、思う。いや嘘でしょ。
とん、と何でもなさそうに庭へ着地して、そのまま向かってくる兄さんが、ちょっと怖い。いろいろと。
「セピア」
だけど、呼ぶ声があんまりにもいつも通りで、なんでもなさそうなものだから。
「……ごめん! 助けて! 反省は、してるので!」
僕も結局、いつも通りに助けを求めて。
なんか、少しだけ笑ってしまった。