gottaNi ver 1.1


<お題>
ベテルギウスの祝福をうけた旅人。紫水晶の痣を持つ。お守りをつくるため、幻の庭園で採れる果実を求めて旅をする。透石膏に縁の深い旅人と仲良し。

***
「幻の庭園にね、そこでだけ実を結ぶ果実があるっていうんだよ」
 夜空に灯る明かりを聞き手に、またひとつ探し物の話が始まる。

「悪酔い? 平気だよ、平気。だってほら、お守りがあるもの」
 からりと笑ったその身には、酔いから守ってくれると言い伝えられてきた石が宿る。
 ベテルギウスの祝福を身にうけているという旅人は、紫水晶の痣を指先で叩いて、そう首を傾げた。とん、とん、と素朴な旋律が密やかに響く。
「ん? 果実を見つけて? お守りを作るんだよ」

 どこかに在るというその木の実から生まれるお守りは、格別の効果をもつのだそうだ。こと、旅の始まりに持つと良い、と。
「そうそう、それ。旅路の安全と幸運を招くお守りができたら、この旅はおしまい」
 矛盾して見える旅の目的を楽しげに語り、旅人は手にした杯を夜天光にかざす。身に宿した水晶より幾分か淡い紫が、ランタンの仄明かりにつられて揺れた。
 透けて見えるのは、祝福の星、ベテルギウスだろうか。
「まあ急いでいる訳でもないし……そうだねぇ、あの星が生きている間に見つけられればいいくらいかな」

 上機嫌で酒杯をあおり、どこかで聴いたような、しかし覚えのない、不可思議な旋律を口ずさむ。

「――この曲? ちょっと知り合った奴が好きでね、よく聴かされてたもんだから、気が付いたら覚えてたんだ。気に入ったなら、どこかで透石膏の旅人に逢った時、よろしくしてやってよ」
 懐かしそうに目を細めて、また痣を軽く叩いて拍子をとりながら、旅人は言った。
「それっぽい奴がいたらでいいからさ。詳しい素性なんか知らないから、適当でいいよ」

 そうして、杯の中身を一息に飲み干すと、立ち上がって身体をほぐす。
「いいじゃない? だって旅をしてるって一点だけで、誰も彼も皆、同じ旅人なんだから」
 適当でいいよ、と笑いながら繰り返してから、旅人は広げた酒器を片付け始めた。

 夜が明けて眠りから覚めれば、また、旅が始まる。
***

この旅人さんの水晶は濃い紫、クラスターを平面に埋め込んだ感じ。長めのポイントが逆三角形に並んでる的な。


UP:2016-02-21
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