空
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その『鳥』は、遥かな昔の古い約束、その履行のために、都度、生まれ落ちる。原初の魔、と伝えられる<翼鳥>から分かたれた『羽』の、唯一無二の王冠として。
すべての『羽』たちの主、すべての『翼』の頂点、いずれ目覚める古き翼鳥の揺籃。そういった役割を負って、幾度も代替わりを重ねながら、その『鳥』は散っていった『羽』を掬い上げてゆく。
いずれ、羽が集い、翼たちが眠り、鳥が翼鳥へと目覚める、その時まで。
当代の『鳥』である空(うつせ)もまた、その理のままに生まれ、生きている。その魂に、全ての羽、あるいは始まりの翼鳥さえも忘れてしまった、古い、世界への慈愛と憧憬とを引き受けて。
目覚めた時、その愛おしさを、始まりの魂へと渡すために。