gottaNi ver 1.1


 エーデルワイス=ユングフラウ

***

 少女はとある冬に生まれた。そうして、吹雪が途切れた、ある晴れの日、凍て空のなか、ひとり雪の残る道を歩いていった。天へと向かい、上へ、上へと。
 そうして『少女』の姿はついに、雪深い山の奥へと消え去った。
 いまは時折、踏むもののない新雪の上へと、踊るように、可憐な靴痕が残されるのみだ。

 彼女はずっと、冬のなかで唄っていた。くるり、ふわりと、吹きすさぶ氷雪と遊びながら。
 いつしか『彼女』は、名前をどこかに置いてきてしまった。
 姿も、いつの間にやらどこかへと捨ててきてしまった。
 唄う声もいつかどこかへやってしまうのだろうか、と、ある日に少女は思った。ならば、最後にと。

 そうして、冬の晴れ間に、少女だった彼女は旅立った。

 あとのことは、さしあたって語るほどのものではない。
 彼女は少女の可愛らしい姿で、少しばかり斜に構えた可憐な笑顔で、今日もどこかの空の下、その声で歌を紡いでいるだろう。
 Jungfrau、乙女の山……あるいは貴き白、Edelweissと、だれかにその名を呼ばれながら。


UP:2023-01-13
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