3.ずっと、ずっとずっとずっと。
それでも悲しいかな、人は変わる
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その幸せを、願った。共に在る事でもなく、手に入れる事でもなく、ただその幸福を。
どれ程に希い渇望しても、叶わない期待というものもある。だからこそ、願う。
緩慢に広がって染み渡る恋慕。けれど其処に熱は無く、浮かされるような狂騒も無い。
言葉の代わりに差し出す微笑みで、掻き抱く代わりに背を見送った。
また、と口にしながら手を離す、躊躇いの無さは罪だろうか?
続く事を、この次を促しておきながら、逡巡無く繋いだ手を振り解く矛盾。
いずれ、移ろうもの留まるものとして辿る道に、果たして納得できていたのか。
それでも問いを飲み込む事が、互いを認める為の必要悪。
共に生きる事は望まない。永遠に欲しいとも想わない。
ただ承知の上で刹那まじわって、そうして離れてゆけばいい。
それだけで永遠は手に入る。
どれ程に強く祈っても同じにはなれない。この停まった時間は流れずに、傍らの命だけが零れ落ちる。
変わってゆく人の隣に在って、変わらず笑い続ける事は、穏やかな終わりを妨げるだけで。
変わらない自分の眼前で、変わりゆく人が笑い続ける事もまた、滑稽な美談にしかならないだろう。
だからこそ、幸せを願った。
手放す痛みすら歯牙にもかけぬ程に、その先ずっと、ずっと。
この永遠が、抱くだけの価値を持っている事を証明して。
傍には在れないからこそ、願う。
その魂を、愛する。
決して寄り添う事の無い流れを知りながら、なお手を伸ばし手を取るその強さを。
確かに残った永遠は、これからもずっと想い続ける。
まじわった刹那の幸福も痛みも、等しく代えがたいものとする。
叶うものなら隣にと、思わなかったと言えば嘘になるが。
ずっと、ずっとずっとずっと。
……それでも悲しいかな、人は変わるから。
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