2.ただ辺りには燃えるような悲しみだけ
鮮やかに見える、終わりだけ
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忘れられない。
忘れたい。
忘れるわけには、いかない。
考えてしまったらもう動けない。頽(くずお)れ、ただ止まるだろう。
生きるのであれば歩かなければならない。この場で立ち竦めば、まず間違いなく死ぬのだから。
蹲って嘆く暇など、どこにもない。
この空虚が、感情が、何かなど気付かないままでいい。
立ち止まっていても生きてゆけるようになるまでは、ここに在る傷から目を逸らして日々を消化する。
そうして、総ての弔いが果たされた後に痛みは戻る。
偲び、喪失を咽ぶ対象が何もかも弔われ、果てた世界で、止まっていた悲嘆だけが鮮やかに。
行き場を失くした感情は、焼け付くようにただただ痛みを吐き出して。
いつか終わるのだろう、とは。
けれど。
……終わるなどとは。
いっそ見事なまでに終焉の充ちた景色。
瞳を閉ざし耳を塞ぎ、忘れてしまいたい程に何も残っていない、けれどあまりの終わり方ゆえに、強く強く記憶を焼き焦がす情景。
瞬いた目は乾いていて、広がる全てを霞ませもせず鮮やかに焼き付けた。
その先へ進むなら、今この痛みを見てはいけないと、判る。
忘れていた痛みを思い出す。立ち続けるため置き去りにしてきた、いっそ忘れたい程に忘れられない風景。
荒廃の面影など何一つ見出せなくなった場所で、鮮やか過ぎる終わりの光景を想う。
瞬くと、広がる再生の景観が揺らぎ、静かに穏やかに霞んで見えた。
今度こそ、その痛みに心を委ねて眼を閉ざす。
止めていた時間を手放して、進む先へと視線を向けて、また笑う瞬間のため。
残されていた傷と想いを弔って眠る。
失ってから初めて、潰えたあの場所を夢に見た。
ただ辺りには、燃えるような悲しみだけ。
鮮やかに見える『終わり』だけ。
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ド外道非情チーム、帰郷。