gottaNi ver 1.1


2.ただ辺りには燃えるような悲しみだけ
  鮮やかに見える、終わりだけ

***

 忘れられない。
 忘れたい。
 忘れるわけには、いかない。

 考えてしまったらもう動けない。頽(くずお)れ、ただ止まるだろう。
 生きるのであれば歩かなければならない。この場で立ち竦めば、まず間違いなく死ぬのだから。
 蹲って嘆く暇など、どこにもない。
 この空虚が、感情が、何かなど気付かないままでいい。
 立ち止まっていても生きてゆけるようになるまでは、ここに在る傷から目を逸らして日々を消化する。

 そうして、総ての弔いが果たされた後に痛みは戻る。

 偲び、喪失を咽ぶ対象が何もかも弔われ、果てた世界で、止まっていた悲嘆だけが鮮やかに。
 行き場を失くした感情は、焼け付くようにただただ痛みを吐き出して。

 いつか終わるのだろう、とは。
 けれど。
 ……終わるなどとは。

 いっそ見事なまでに終焉の充ちた景色。

 瞳を閉ざし耳を塞ぎ、忘れてしまいたい程に何も残っていない、けれどあまりの終わり方ゆえに、強く強く記憶を焼き焦がす情景。
 瞬いた目は乾いていて、広がる全てを霞ませもせず鮮やかに焼き付けた。

 その先へ進むなら、今この痛みを見てはいけないと、判る。

 忘れていた痛みを思い出す。立ち続けるため置き去りにしてきた、いっそ忘れたい程に忘れられない風景。
 荒廃の面影など何一つ見出せなくなった場所で、鮮やか過ぎる終わりの光景を想う。

 瞬くと、広がる再生の景観が揺らぎ、静かに穏やかに霞んで見えた。

 今度こそ、その痛みに心を委ねて眼を閉ざす。
 止めていた時間を手放して、進む先へと視線を向けて、また笑う瞬間のため。
 残されていた傷と想いを弔って眠る。

 失ってから初めて、潰えたあの場所を夢に見た。

 ただ辺りには、燃えるような悲しみだけ。

 鮮やかに見える『終わり』だけ。

***

 ド外道非情チーム、帰郷。


UP:2015-10-18
よければ感想ください!|д゚)ノシ