gottaNi ver 1.1


1.綺麗に笑う、 そう思うのは私から覗く貴方の存在が綺麗だから
  あなたは、 きれいに、 笑う

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 何も、飛び抜けて見目が優れていた、という事もないと思うのだ。

 確かに、覚えのある雑多な顔と比べてみれば、そう悪い造作ではなかったし、美しい、と言う者の気も知れないではなかったが、その評は飽く迄も“この世”のみを見てきた上。
 後にしてきた彼の世にあって、讃える言の葉すら霞むが如きを見知る身としては、到底その評には頷けない。

 けれど。

 ただ、綺麗だったと、思い出す。

 夜を待つ茜の下、まろぶようにして駆けてゆくあまりに幼い背を、目を細めて見守るその柔らかさ。
 あるいは、ゆるゆると流れる水面にたゆたう、桜花の雪へ向けて見送るその穏やかさ。
 そしてまた、呼び声にいらえて歩みを止め、おもむろに振り返って見遣った、その鮮やかさ。

 交わった視線に、驚くほど通る響きで名を紡ぐ。
 瞬きの間の気まぐれに、つと差し出して見せた手を押し戴く。
 ……かけがえの無いものを、扱うように。
 それでいて無造作に、無防備に。

『あなたが綺麗だから。そして、そうして笑うから。』

 そっと落とすように告げた理由と、ふっと零すように返す理由。

『わたしが笑うのは、あなたが綺麗だから。』

 だから、笑う。それ故に、笑む。
 見目にではなく、その魂に。

 綺麗に、笑う。

 そう思うのは、わたしから覗くあなたの存在が綺麗だから。
 あなたは、綺麗に笑う。


UP:2015-10-18
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