「……魂はある、生命もまだ宿っている。確かに、〈私〉ならば肉体を与えることも出来る」
「だいぶ傷ついているみたいな魂だけど、そうだね、〈私〉ならそれも癒せる」
だが、と目覚めた〈庭〉の主たちは目を細めた。
「もしも〈私たち〉があの過ちを赦さないとしたら?人の子に掛ける慈悲なんてないと言ったら、あなたはどうするのかな?」
「その時はもろともに滅ぼしてもらえれば」
笑い、沙迅はいっそ穏やかに答える。
「この望みが果たせないなら、世界など滅んでくれたほうが清々する」
だから、どうか『彼』との再会を。
叶わぬのなら、いっそ終焉を。
静かに、苛烈に、ただひとりだけを求めて笑う、その執着に二柱がしばし言葉を失った。
「っふ、ふふ」
思わず声をこぼしたのは、〈翼鳥〉だった。
「ふ、あは、あははははっ」
笑声は次第に大きく、楽しげに。
「はは、っは、あっはははは! いいね! ……いいよ、私は好きだな、そういうの」
「……イグ」
「だって、コードも嫌いじゃないでしょ」
「…………」
くすくすと、上機嫌で指摘する同胞に、〈大樹〉が沈黙で肯定を返す。
――他ならぬ自分たちが、何より強く、ただひとりを求めているのだ。再会か終焉かという極端な感情にも、よく覚えがあった。
「廃園の守り手に連なるもの、目覚めた『端』の使い」
「……〈私たち〉と重なる願いを抱く者」
「はい」
「――いいよ、あなたの願いを叶えてあげる。人の子の罪をどうするかは、それから決めることにしようか。そもそも、アルの状況がまだなにも分かってないし」
「――慈悲に、心からの謝意を」
頭を垂れて、沙迅はひとつ誓いを立てる。
「私の使える限りのすべて、貴方たちの望む世界のために」
――たとえそれが、すべての人の子の死であっても。
告げず結んだその言葉を、しかし違わず読み取って。
ふわりと光が陣を描いた。