25.他人と共にいなければ寂しいの?
弱い生物は滅べばいいのに
***
長い微睡みの果てに、広がる世界を視る。
黄昏を顧みず、黎明を冀わず、永劫を煩わず。
受容を求めず、救済を望まず、同調を欲せず。
望みは、己の欲するを識る事。
願いは、己の為せるを量る事。
己を律する理の枷、覆しがたい束縛を退けて生じたそれは、向けられた全ての否定を拒み、打ち滅ぼした。
同族より与えられた異能の忌み名、同胞より齎された死の刃を抜け、夜闇を翔ぶ。
追われるとあれば逃れ、阻まれるとあれば破り、已まぬ排撃に倦んで幾度、月の廻りを数えて幾歳。
全ての終焉を臨む間際、陰無き月の夜に邂逅は成った。
共に理の枷から零れ落ちた生まれの鳥が、真逆を目指し穹を渡る。
その道行きに祈りは無く、その行く先に神は無く。
伸ばされる腕(かいな)を無造作に手折り、己の望みを導にただ翼を誇り。
永い羽搏きの最中に、広がる分岐を視る。
墜ちる事を知らない鳥は、あらゆる言葉を抜け刃を退け、祈りを捨てた。
死には死を。
共に在れと呼ぶ声には断絶を。
従えと命ずる言葉には沈黙を。
力には力を、闇には闇を。
群れて初めて安堵する者たちに、同一であれと望む者たちに、それは鮮やかな笑みで拒絶を返す。
「 他人と共にいなければ寂しいの?
――弱い生物は滅べばいいのに。 」