gottaNi ver 1.1


16.言葉は刃 沈黙は拒絶 鮮血は証明
  だからどうしたって寂しいの 永久は罪 傲慢の罰

***

 目の前が暗くなり、何も考えられず、ただ呆然と佇んでいた。嘘だと思いたかった。常に焦がれ、求めていた存在が、永遠に消えるかもしれないという恐怖に、身動きが取れなくなる。
 どうして彼が死ななければならないのか。どうして彼だったのか。せめて他の誰かなら。
 分からない。分かりたくない。理解など出来なくていい。認めない。
 ……認めない。
 どんな事をしてでも、彼を取り戻そう。死んだなど、認められない。
 底冷えのする闇から見つけた僅かな光のような、小さな希望が、押し寄せていた絶望を振り払う。動かなければ。呆然としている暇などない。

 だから、力を求めた。彼を取り戻す為の、死を退けるだけの力が必要だった。

 それから、随分と長くかかった気がする。けれども、望みの途方もなさから考えれば、短い時間だったのかもしれない。
 気がつけば、足元には広大な国と人とがいて、手には願っていた力があった。ただ隣に彼がいないだけで、それ以外のものは全て身の回りにあったのではとさえ思える。
 それでも、彼がいないなら意味がない。彼がいなければ仕方ない。
 何もかも、彼の為に必要だから求めたもので、彼以外のどんなものがあっても、彼の存在がなくては決して満たされないのだ。

 その渇望は、穏やかな言葉の前で凍りつく。

『 死は摂理、死者を呼び戻そうなどと願う事はせず、生きている者を大切にして欲しい 』

 語る声が痛烈に胸を刺す。どんな刃よりも強く傷をつける。どうしてと問いかけても返事はない。
 取り戻せると思った筈の存在が、今度こそ永遠に失われてしまう。この望みが、叶うに違いないという確信が、傲慢だったと言うのだろうか。

 静寂が広がった。きっと、永遠に晴れないだろう。

 言葉は刃。沈黙は拒絶。鮮血は証明。
 だから、どうしたって寂しいの。

 永久は罪、傲慢の罰。

***

 昔々の、ささやかな愛と我儘と、悔恨。


UP:2018-08-21
よければ感想ください!|д゚)ノシ