16.言葉は刃 沈黙は拒絶 鮮血は証明
だからどうしたって寂しいの 永久は罪 傲慢の罰
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目の前が暗くなり、何も考えられず、ただ呆然と佇んでいた。嘘だと思いたかった。常に焦がれ、求めていた存在が、永遠に消えるかもしれないという恐怖に、身動きが取れなくなる。
どうして彼が死ななければならないのか。どうして彼だったのか。せめて他の誰かなら。
分からない。分かりたくない。理解など出来なくていい。認めない。
……認めない。
どんな事をしてでも、彼を取り戻そう。死んだなど、認められない。
底冷えのする闇から見つけた僅かな光のような、小さな希望が、押し寄せていた絶望を振り払う。動かなければ。呆然としている暇などない。
だから、力を求めた。彼を取り戻す為の、死を退けるだけの力が必要だった。
それから、随分と長くかかった気がする。けれども、望みの途方もなさから考えれば、短い時間だったのかもしれない。
気がつけば、足元には広大な国と人とがいて、手には願っていた力があった。ただ隣に彼がいないだけで、それ以外のものは全て身の回りにあったのではとさえ思える。
それでも、彼がいないなら意味がない。彼がいなければ仕方ない。
何もかも、彼の為に必要だから求めたもので、彼以外のどんなものがあっても、彼の存在がなくては決して満たされないのだ。
その渇望は、穏やかな言葉の前で凍りつく。
『 死は摂理、死者を呼び戻そうなどと願う事はせず、生きている者を大切にして欲しい 』
語る声が痛烈に胸を刺す。どんな刃よりも強く傷をつける。どうしてと問いかけても返事はない。
取り戻せると思った筈の存在が、今度こそ永遠に失われてしまう。この望みが、叶うに違いないという確信が、傲慢だったと言うのだろうか。
静寂が広がった。きっと、永遠に晴れないだろう。
言葉は刃。沈黙は拒絶。鮮血は証明。
だから、どうしたって寂しいの。
永久は罪、傲慢の罰。
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昔々の、ささやかな愛と我儘と、悔恨。