11.恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋 に
そんなものに現を抜かしているような私に見えます?
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指輪を、と、寝物語に微笑んだ。
互いにだけは、永遠など望まないから、そのために。
どちらかが逝くことになったら、永遠が訪れる日がきたら、身につけましょう。
永遠は割合に早くきて、指輪は間に合わなかったけれど。
指輪を、と、微笑みだけで言いのこした。
はじめは見合いの話で。いまは務めだけで手一杯だからと断った。
見透かしたように、そんな話を持ち出す余裕はじきに無くなるから言っているのだと微笑まれて、しかたなく主君以外のお相手には興味がありませんと苦笑したのだ。
それでかわせると思ったから。
そうしたら、予想していた顔で肩をすくめて、冗談でいなすならもっと巧くやりなさいと、予想していなかったことを言われて、つい言葉をかえしてしまった。
『その場しのぎで申し上げるほど、部下の役だけに徹するつもりでもなかったので。』
どんな風にこたえるだろうかと思っていたら、他の相手を口説くならもう少し巧くやりなさいと、同じような微笑で言われてしまった。
勝てませんねとこぼせば、この場合は痛み分けだろうとまた微笑(わら)う。
いつも、仕事さえしっかりしてくれれば、私生活に干渉するつもりはないとしてきた上司は、やはり仕事さえしてくれればいいと、あっさり話を片づけた。
ご自分が当事者になっても変わりませんねと呆れてみせたら、私だって駒に過ぎないのだから変わりようがないよと気負いもなく微笑む。
「命が惜しいなら、動くな」
ありふれた台詞が、おかしかった。
「御前で、務めを全うしたと明らかにしてお役目を降りられるのは、ひとつの幸せですね」
そんな言葉しか出てこないことも、少しおかしかった。
悔いは、しない。
ただ選んだ道のずっと先だけを見る、その強さに惹きつけられるのだ。
流れは絶対に寄り添わず、永遠なんて望むべくもないけれど、それでよかった。
ゆく先から視線をはずして、永遠を願う姿には、きっと焦がれないだろう。
迷わず務めを選んだ自分が、あまりに自然でおかしかった。
永遠など望みはしないから、離れて正解だとしか思えないほど、幸福になってほしい。
また、離れるつもりで交わった時間で、確かに永遠が手に入ったのだと思っていたい。
出会ったことも手を取ったことも、離れたことも正しいのだから。
せめてもの証明に、指輪を望んだ。
寄り添うことのない流れを知りながら、なお手を伸ばし手を取るその強さを愛するから、一時の情は選ばない。
恋に。恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋に恋、に。
そんなものに、現を抜かしているような私に見えますか?