状況は仮だけど展開はほぼ確定してる的なそれ、ポロリも公式だよ!(
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追い込まれた、と歯噛みする。生き残った従者とも分断された先は細い山道で、すぐそばには雨のあとで増水した川。
――天泣で起きた諍いに関わり、馬鹿兄がとんでもない無茶をしてから、しばらく経っていた。
表向き、天泣の過激派による襲撃とされた件の騒ぎは、先の天泣王を預かっておきながら拉致まで許したとあって、鬼見城の中でも、現体制の瑕疵を批難する声が上がっている。
その対応に追われる中での、襲撃。
もともと、今回の視察は予定外から捻じ込まれたもの。端から仕組まれていたのであれば、対策の上をいかれてもおかしくはない。……だが。
下手を打った。波乱を予期していながらここまで無様をさらしている事実に、腹が立つ。この程度をいなせずに何を守るつもりだというのか、自分は。
王宮にはまだ療養中のコゾメがいる。ここで伴侶である自分が死ぬなどすれば、帝妃である彼女に適当な後釜と無理な要求とが押しつけられることは、想像に難くない。
そんな未来を、作るわけにはいかなかった。
「……いたぞ!」
声に、ほぼ反射で距離を稼ごうと足が反応する。
身を返した先、川とは逆側の横手から、不意に殺気がした。
「しまっ……」
伏兵。
木陰から走り出してくる相手に、対応しきれない。
まずい……!
「馬鹿だね」
軽く、笑う声が、した。
上から降ってくるようにして現れた相手に、腕を引かれて、庇われる。伸ばされたその手に遮られた刃は、自分に届くことなく終わった。
「あに、う」
出かけた呼びかけを押し止めるように、ひとつ、額に口付けが落ちる。
ひどく穏やかな目が、無言で笑って。
馬鹿は、お前だ。
「――馬鹿がッ!」
「悪いね」
俺の叫びにそれだけが返る。
片腕を躊躇いなく差し出し、捨てた兄は、流れるように――いつの間にか抜き取っていった俺の剣を、残った右手で振るった。
ひと息で刺客を片付け、その屍を川のほうへと蹴り出して、そうして、今しがた自分がおりてきた、上方に張り出した山の一角へと目を向ける。
やめろ。
声にできなかった叫びをきっと知っているだろうに、その後の選択にはなんの迷いもなく。
「ぐ、ぅ……っ!」
足元を掬い上げるように払い、軽くはないこちらの体躯を容易く蹴り転がして、自分と敵方の方向とから遠ざけ、更に背を向けて距離を取る。
地を滑らせてこちらへと剣を投げ返した手が、はらりと振られて。
紡がれた呪法は、容赦のない威力で辺りを爆砕した。
もともと、続いた雨で地盤が緩くなっていたのだろう。土煙が、すべてを覆い、勢いよく崩れだした土砂が、すべてを川へ押し流す。
「っの、ばが、が……っ」
切れ切れに吐いた恨み声は、届かない。
あとには、ひとつ、落ちた腕の先が転がっていた。